55-5-4(『調停される』 2 11/43)
『調停される』の内容は留保されなければならない、と5-2に書いてすぐにまた訂正であ
る。まだ見ぬ盟友O君にも『調停される』を送らねばとコピーしているうち、まだ訳し
てはいないものの、それがどのような特徴を持っているかを確認することが出来たの
だ。
オポジションの状態において、両キングは「シスタースクエア」と呼ばれる“支配す
るマス目”を幾つか持つ。そして、そのマス目は「シスタースクエア」と呼ばれる以
上、同型を保つ。ある対角線をまるで鏡(!)のようにして、マス目は対峙するのであ
る。ただ、この鏡は不思議な鏡である。対角線上で互いを映しつつ、位相を変えるの
だ。大げさに例えを出すなら、白が“長四角の長い辺側”を対角線に向けているとき、
黒が“短い側”を向けていることもあるという意味だ。同型で対峙しながら回転軸に
よって歪みを生じさせていると言ってもいい。
そして、ここが重要なのだが、両「シスタースクエア」上においてキングが次に動
くべきマスは対角線を鏡として、それぞれ色違いに位置する。これはおそらくオーソ
ドックスなオポジションでも同じことだろうと思う。ともかく、ヘテロドックス・オポ
ジションもまた「色違いの見合い」であることに変わりはないのである。
初期に思いついていながら、「チェス鏡」という概念をまだ書きつけていなかった。
チェスは鏡のようにして白黒の陣営が向かい合うゲームだが、このとき色が必ず反転し
ているのである。右手が左手になっているのが鏡の不思議だとすれば、チェス鏡におい
ては白が黒になり、黒が白になっていることになる。我々のタームで言うならば、光が
闇になり、闇が光になっているのだ(光と影ではなく、やっぱり光と闇がを基本型にす
ることにした)。
同じように、女が男になり、男が女になるような鏡。上が下になり、下が上になるよ
うな鏡。光と闇が反転する以上、左右だけでなくあらゆるものが転換して存在するよう
な鏡を考えたくなるのは、同じくチェスプレイヤーであったルイス・キャロルを例に出
せば足りるだろう。キャロルが少女趣味的な反転に惚れ込んだのに対し、デュシャンは
もっと科学的に、または疑似科学的に次元の問題を考えたということだ。
デュシャン的なチェス鏡は、まさに「ヘテロドックス・オポジション」の中にある。
対角線と形状の変化。“キングが支配するマス目群”はまた、少なく静かな駒並びの中
に強烈な力の放射を具現化する。
それらは必ず光と闇の反転を基本としている。
これは撤回されなくてよい考え方だ。
参考図15 『調停される』(55-5-13) |
中盤戦は長いのだ。
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