55-5-11(鏡の関係 12/8)



 55-5-5において、「奇数の見合い」をいずれ紹介す ると書いた。これはオックスフォード版チェス辞典内の『conjugate squares』の項 にある。『conjugate squares』とはいうまでもなく、シスター・スクエアと同義語 だ。  イレギュラー・オポジションというものがあるとチェス辞典は言う。図9に示すよう なキングの位置関係がそれであるらしいのだが、我々のノートでは、確かに“両キング が互いに異色のマスにいる”ことを見ればそれでいい。  そしてまた、このようなケースにおいては、“通常のオポジションと違ってシスター スクエアに規則性がない”という説明をうのみにしておけば足りる。


図9

 さて、それよりも注目すべきことがある。O君の翻訳をもとにするとこうなる。  図10を見ていただこう。

図10

 これは“1892年にCharles Dealtry Locock が「ブリティッシュ・チェス・マガジ ン」に発表したスタディ”の発展形らしい。“1901年、世界チャンピオンのラスカー が注目し”、以来同種のスタディが続出したという。そして、20〜30年代には“シス タースクエア特有の数多くのパターンを包括的に分類しようとする試みが行なわれたの だそうだ。  1932年に出版された『調停される』もすなわち、そのひとつだ。

 さて、図に示された赤線の囲いが重要である。  この囲いが“h2 - b8 の対角線を軸とした線対称の関係(mirror-fashion)”に置 かれているからである。Locockはこの状態を「8マスのシステム」と呼んだらしい。  ふたつの囲いは互いに鏡に映った状態だ。  のちほど説明するデュシャン・ハルバーシュタットの研究は、つまりこのような鏡の 状態をめぐっている。  ただし、オックスフォード版チェス辞典はこのLocockの「8マスのシステム」に対し て、「興味深い観察だが,しかし,18あるシスタースクエアの半分も含んでいない」と 冷徹なのだが……。

 なぜ『調停される』の考察の前に、わざわざ図10を見せたのかといえば、まずひとつ にデュシャン自身がこのLocockの研究をも基にしているからであり、今ひとつはなん とあのルーセル定跡を説明したタルタコーバの文の中でもこの「mirror-fashion」に 似た概念が言及されているからだ!!

 次の項にその文を示そう。   



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