ルーセル公式1-4



『キングの決闘』

 

 1993年1月パリで行われた分析的な終局(訳者注・つまり、ルーセルは途中で
ゲームをやめ、ロミーとともに分析に移ったということだろう)。黒の手番。
 教育的な事例のひとつである。

1.……  Nd5+!
 黒の方はポーンをひとつ欠いているにもかかわらず、残った駒を動かしながら、
ポーン・エンディングに突入し、注目すべき美点によって均衡を保つ。
2.N×d5    K×d5
3.Kd3       Ke5
4.Kc3       Kd5
5.Kc2!      Kc6!

 素早く「遠いオポジション」(ドイツ語で「Fernopposition」)に。それどこ
ろか、危険なのは力ある侵入。
 5で、黒c4なら
 6で白a3になり、危険。
 もしそうすると、6手目の黒d4?
   7.Kb3  Kd5
   8.白a4で優勢

 あるいは、6手目黒がKd5なら
   7.Kc3  Kd6?(7手目で黒はc6にいるのが絶対)
 8.白Kd4で勝ち
 (訳者注・これで白は黒唯一のポーンを失うことになる。そこで実際は……)
 

6.Kb3       ……Kb6

 重要な局面。仮にこうしてみる。
 もし6.黒Kd5なら、7で白はa4!  黒b×a+(あるいは7手目で黒がKc6と受け
 ても、8手目で白a5!)。そこで8手目白K×a4、黒Kc6。9手目で白Ka5とし
 て勝利。本文の差し(訳者注・つまり「6.Kb3   Kb6」)から7手目に白a4
 としてもたやすくゲームを支配出来る。
 7手目黒b×a+ 8手目白K×a4   黒Ka6aなどなど……。引き分けに持ち込
 むためには、

7.a3……       Kc6
8.Kc2           Kd5
9.Kd2          


 再び「遠いオポジション」を取るための最後の試みだが、黒は近かろうが遠か
ろうが負けたくはない。
 こういった差し方は多少なりとも知られているところだが、実際のゲームで適
用するのを見ることはとても有益なことである。


9.     Kd6




         『引き分け』

 レーモン・ルーセルの表現によれば、マス目というものは(特にポーン・エン
ディングにおいては)空間の中に投影された時間をあらわしている

(訳者注・「空間の中に投影された時間をあらわしている」の部分は、記事中で も斜体がかかっている)                      (『レシキエ』1933年二月号) (これで予告した訳はすべて終了である。拙訳なので機会を見ながらまた訳し直す)  



INDEX

Copyright (C) SEIKO ITO , EMPIRE SNAKE BLD,INC. All rights reserved.