ルーセル公式1-4



ビショップとナイトによるチェックメイト

レーモン-ルーセル公式の余白におけるいくつかの考察

       タルタコーバ記す  1932年11月発行の『レシキエ』195号に載せた先の記事でも指摘し たとおり、ビショップとナイトに関するレーモン-ルーセル公式という ものは、共同戦略の新しい地平というものを覗かせている。  チェスボード上の様々な駒とマス目の間に存在する謎めいた関係に ついての研究にとりかかるということはとても魅惑的なことであろう。  さて、論評もよいことだが、そこから実践的な帰結を引き出すこと はさらに優れたことである。その意味で、レーモン-ルーセル公式とい うものは、絶望したアマチュア・プレーヤーが今まで経験的にしか知る ことが出来なかった事柄について一つの方法を打ち立てたと思われる。  私の先頃の記事の発表に続いて、元U.A.A.Rのアマチュアという偽名 で知られる優れた専門家が、この問題の歴史的なパースペクティブを実 に良い形で示すような貴重な情報を寄せてくれた。  コジオ以来多くの人々がビショップ/ナイトによる王手詰みについて 思索をめぐらせてきた。この2つの駒の隣接した付置という考えは、マ ルセイユのオズワルド・ロージエ氏(Oswald Laugier)のものと思わ れるが、彼はこの付置を詩的に[谷間の百合]と呼んでいたのであった。 (1907年、『レシキエ』フランス版2月号)  しかしながら、それは(こう言ってよければ)静態的な状態に忠実な 形で問題をめぐっていた。そこで、元U.A.A.Rのアマチュア氏は1919年 にパリで発表した専門書において、敵のキングの完全な、あるいは部分 的な監禁の決定的位置と呼ぶものについての使用条件を追求しようと試 みたのであった。  しかしながら、これらの記述の深さにもかかわらず、 プレイヤーの導 きとなるような実際的なちょっとした要点が欠けていたののである。元 U.A.A.Rのアマチュア氏がとても親切に、かつ恭しく示してくれたように、 私が先の記事においてレーモン-ルーセルの公式よって初めて3つの白い 駒の役割が整えられたと言っていることには理由があるのだ。  のみならず、注意深い者ならば、独創的であると同時に簡潔な(著者 注・1)この公式の中に、まぎれもない宝物を発見できるであろうこと を私は強調しておく。  注1/concise (「さらに、この簡潔性によって特に、小説家としてのレーモン・ルー セルの文体というものは輝いている」というような注が下に入っている) 1.…ナイトの役割は限定される。 2.セディーユの恩寵について…それはまるで厳粛な言葉をきくがごとしだ。 In si l'on signo vinces(訳者注・ここにラテン語が入る) (技術的な視点でいうと、セディーユという綴り字記号によって、つまり “ビショップと同じ色で隣接したマス目のうえに見出されるが、ビショッ プの右側で敵に対してはより遠い位置にいることによって”望ましい監禁 が出来る)(訳者注・このくだり不明) 3.…来るべきセディーユ…ある局面が生ずる諸段階は一つ一つが論理的で あると同時に視覚的につながっている。 4.もう一つ指摘しておくことがあって、今まではチェスを勉強している生 徒の注意をミラーポジションの存在に受けさせるということがあまりなか った(元U.A.A.Rのアマチュア氏は私に(ミラーポジションを)「こだま のポジション」と名付けるように提案している)。このことがレーモン- ルーセル公式の教育上のメリットであるといえる。  もし同様のシチュエーションがチェスボードの上に存在していなかった としたら、それを発明する必要があるだろう。  最後に以下のようなことを補足しよう。一人の著者によって格別エレガ ントな王手詰みと宣言されたこのビショップとナイトの王手詰みは、フラ ンスのプレイヤーたちのそれぞれの功績を価値あるものにしている。つま り、フィリドール、またはTh.Herlin(リールの匿名氏)を1862年に出版 された16手の王手詰みとともに、そしてO.ロージェ、さらにVilleneuve- Esclaponのジャン侯爵、元U.A.A.Rのアマチュア氏、Ch.デゥレタン氏、シ ェロン、それからいまやレーモン・ルーセル! (『レシキエ』1932年十二月号) (訳者注 もう一本記事はある 続く)  



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