ルーセル公式1-3
そのほかのケース
今度は、黒のキングがa2-g8-a8の三角形の周によって形成される最初の段階
の三角型包囲網の中にいまだ閉じこめられていないような場合について調べてみ
よう。
閉じこめはある程度簡単な方法で実現可能である。
A 黒のキングが真ん中にいる場合
(図4を参照)
図4 |
白の部隊のグループ化は次のような手順で可能である。 1.白キングg3-f4, 黒キングd5-d4 2.白ビショップf5-e6, 黒キングd4-c5<c3と打った後で3.白キングe3, 黒キン グb2(あるいは3.で黒キングb4/4.白キングd4…など)/4.白キングd2, 黒キング a1(あるいは4.で黒キングa3と打って5.白キングc3など…)/5.白キングc3…黒 のキングはすでに隅に追いやられているので、まもなくh7-b1-h1の三角形の中 に閉じこめられるだろう。そしてh1の角のマス目近くで王手詰みに達するであろ う。(黒のキングを『偽の隅』から追い出すやり方は図5で明らかになる)> (訳者注・『偽の隅』とは“ビショップと同じ色を持ったマスが角に”ない盤面 隅のことである) 3.白キングf4-e4, 黒キングc5-d6(あるいはb4で、続く4.白キングd4, 黒キン グa3/5.白キングc3など) 4.白ビショップe6-b3(その後の操作にとってもっとも有利な、マス目を占める のである。この『看守』としてのビショップの扱いにおける重要な段階という のは、それをb5に置き、続いて『勝利をもたらすために!』b7に置くことであ る), 黒キングd6-e7(もし黒キングがc5と来たならば、5.白ナイトd3でチェッ ク…などもある) 5.白キングe4-f5, 黒キングe7-d6(あるいは黒キングf8で6.白キングf6など…) 6.白ナイトe5-d3/チェック, 黒キングd6-e7 7.白キングf5-e5, 黒キングe7-f8 8.白キングe5-f6, 黒キングf8-e8 9.白キングf6-g7 以上をもって、我々は図3で明らかにしたものと同じ形に持ってくることが できる。 B 黒のキングが『偽の隅』にいる場合 (図5を参照) 図5のように黒のキングが白のビショップとは違った色のマス目であるh8 におり、我々がそのキングをa8へと退かせるようにするには、次のような手 順を踏めばよい。 1.白ビショップa2-b1(何より、引き分けを避けるために), 黒キングh8-g8 2.白キングg6-f6, 黒キングg8-h8(または、2.において黒はf8,3.白ビショッ プa2として黒のキングがすでにa2,g8,a8の三角形の中にいる場合、白のナイ トが以下に示すような任務を全うするためにうまくやっていくには、3.黒キン グe8/4.白ナイトf2, 黒キングf8/5.白ナイトd3, 黒キングe8/6.白ビショップ e6, 黒キングf8/7.白ナイトf4, 黒キングe8/8.白ビショップf7チェック, 黒キ ングd7/9.白ナイトd3, 黒キングd6/10.白ビショップe6…等。これらの動き についてはすでに図3で説明した)
図5 |
3.白ナイトh1-f2(黒のキングが自ら好んで致命的な三角形の中に入りたがらな い以上、h8のマス目のそばを行ったり来たりするのが明らかなので、白の軍団 の局面の最初の要素というのは、白のナイトを動員して黒のキングh8のマス目 から徹底的に退かせる),黒キングh8-g8 4.白ナイトe5-f7, 黒キングg8-f8 5.白ナイトg4-e5, 黒キングh8-g8 6.白ナイトe5-f7, 黒キングg8-f8 7.白ビショップb1-a2(黒のキングはすでにふちのところにいるので、そのキン グを反対側に追いやるための古典的な方法、つまりh8からa8へ追いやる古典的 な方法は、7で白ビショップh7から始めることであろう。ところでレーモン-ル ーセル公式に忠実な我々としては白のビショップをそれが黒キングの動きを遠 く離れたところから監視しながら広い範囲の影響を形作るようなところに<白 のビショップを>置くわけである。), 黒キングf8-g8 8.白キングf6-g6, 黒キングg8-f8 9.白ナイトf7-e5(白の軍勢の次なる計画の局面がここで始まるわけである), 黒 キングf8-e7 10.白キングg6-f5(次のように進めていくこともできるであろう。;10.白キン グg7, 黒キングd6/11.白ナイトd3…白のビショップがc4に行くと想像して、 セディーユの位置に白のナイトを置く。以下のようなことに気がつくであろう。 白のキングが十分近くない限り、d3における白のナイトの位置というのはます ます好都合なのである。なぜならば、b4における後方から逃げ出すためのマス 目の監視のみならず、黒のキングが前方から逃げ出すためのマス目をも押さえ る機能を兼ね備えるからである。:e5?) , 黒キングe7-d6(後方の黒のマス 目から逃げ延びようと試みている。なぜならば;10.で黒キングf8/そのとき 11.で白キングf6…等が考えられるからだ) 11.白ナイトe5-d3, 黒キングd6-c6(またはe7と打って、12.白キングe5,など …) 12.白ビショップa2-c4(セディーユの位置に!:12.で白ナイトe1, 黒キング c5/13.白ナイトc2, 黒キングb5/14.白ビショップb3,など重要な仕事とともに 最初のセディーユの形成を避けることができる。しかし、他の場所で十分に落 ち着いて継続することもできる:12.で白キングe6, 黒キングb5/13.白ビショ ップb3。そして、黒のキングの後方からの逃走は妨ぐことが出来る。このこと を柔軟性の原則のもっとも大きな価値としてみなすことができるだろう。 それはゲームの終盤においても価値のあることである。なぜならば魔の威力 (訳者注・「こぐま座の魔法」とも訳せる。全体にタルタコーバは星座のイメ ージを持ってこの原稿を書いているように思われる)ビショップb3-ナイトd3 という付置は、のちのちセディーユの初歩的な形に持っていける形だからであ る, 黒キングc6-b6 13.白キングf5-e5, 黒キングb6-c6(もし13.で黒キングc7で、14.白ビショッ プb5 すると黒のキングはa4-e8-a8の三角形によってできあがった次の段階 の三角形にすでに監禁されたことに気づくだろう。13.で後攻黒キングa5/ 14.白ビショップb3!という手に関しては先の考察を参照) 14.白キングe5-e6, 黒キングc6-b6 15.白キングe6-d6, 黒キングb6-a5 16.白キングc4-b3!, 黒キングa5-b5 17.白キングd6-d5, 黒キングb5-a5 18.白キングd5-c5, 黒キングa5-a6 19.白ビショップb3-a4, 黒キングa6-a5 20.白ビショップa4-d7, 黒キングa5-a6 21.白ナイトd3-e5, 黒キングa6-a5 22.白ナイトe5-c4チェック, 黒キングa5-a6 23.白キングc5-c6, 黒キングa6-a7 24.白キングc6-c7(あるいは白ビショップc8,黒キングb8/25.白キングd7,黒キ ング…/26.白キングc7…等), 黒キングa7-a6 25.白ビショップd7-e8(待ちの態勢), 黒キングa6-a7 26.白ビショップe8-b5, などすでに図3で表した形に近い状態となる。 ★ ★ ★ 追加の指摘(最初の位置と8つのミラーポジション) すでに暗に示したように、我々はアマチュアのプレーヤーの出発点として最も 好都合なものを採用するように勧めているのである。最も好都合なものというの は、最も明白なものでもあって、頭の中にしっかりと固定されるのだ。それはセ ディーユの付置のことである。ビショップb3-ナイトc2という、図6に見る形だ。
図6 |
なぜこの付置はこんなにも好都合なのか。まずビショップの位置を調べてみよ う。 レーモンルーセルの公式を応用するプレイヤーは、経験的な説明(つまりa2- g8-a8の大きな三角形の斜辺の2番目の升目に付置するビショップはa2-a8の斜 辺のマス目を監視をするのみならず、必要な場合にはa4の後方からの逃走のため の白いマス目も監視する。)に甘んじて納得する必要はない。アマチュアプレー ヤーにしても同じことである。 この忠実な衛星であるナイトの位置を今から見てみよう。 白のナイトのc2における位置というのはセディーユの公式によって自動的に与 えられている。 チェスゲームの様々な駒や様々なマス目が作り出す謎めいた関係の偉大なる意 匠に属すこの魔術的な公式。ビショップのb3,ナイトのc2の付置の目的というの はA8の角のマス目のまわりで王手詰みを作り出すことである。(黒のキングが 三角の中に閉じこめられている間は) さて、先に示した付置というのは、チェスボードにおいて8つのミラーポジシ ョンの中に形成されるという事実を記憶にとどめておかなければならない。すな わち、白のマス目にいるビショップにとってはa8の角のマス目のまわりで王手詰 みを狙ってa2,g8,a8の三角形の中で行う仕事、そしてg6,f7,c2,b3というのは h7,b1,h1の三角形での仕事。黒いマス目にビショップがいる場合にはビショップ g3,f2,c7,b6となって、h2,b8,h8の三角形の中における仕事、次のb6,c7,f2,g3, そしてa7,b1,a1の三角形における仕事。 この実践的なやり方の指摘によって、レーモンルーセル公式は詳論を越えた。こ の公式が問題としている王手詰みに関する現方法の技術的対応のみならず、戦略的 概念のきわめて興味深い拡大といったものを、チェス界が認めることを期待してい る。 (訳者注・ここで最初の記事は終わっている/次の記事の訳に続く)
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