ルーセル公式1-1
<1932年 『レシキエ』11月号より>
“一九三二年、私はチェスを始めた。三カ月半の後、私はビショップとナイトの非常に難し
い王手詰めに関する定跡を発見した”(訳者注・冒頭にルーセルの言葉が引用される)
ビショップとナイトによるチェックメイト
新しい手法が簡単にしたビショップとナイトによる王手詰めをS.タルタコーバが解説する
白キング+白ビショップ+白ナイト 対 黒キング
緒言
最近、諸氏によって(MM.Przepiorkaやドゥレタンなど)諸公式が提案されたにも 関わらず、アマチュアプレイヤーたちの数多くの記憶が明確に保てず、プロセスが意 外なほどすぐに忘れられてしまうと嘆いているのを耳にする。 古い指南書だとキングはすでに端(bande)の位置まで追いやられており、そのキ ングをこちらにとってのいい角度へと面倒なやり方で追いやろうとしているだけであ る。 アマチュアプレイヤーにとってとても必要な指針の第一歩は、ドゥレタンの三角形 のシステムによって実現したのだった。それに関しては特に、Cheron(訳者注・eに アクサンタギュ)の著述をみていただきたい。三角法はビショップをうまく扱うこと を可能にするけれども、ナイトの扱いについては十分に明確な批評をいまだもたらし てはいないのである。 今回、3つの白い駒(訳者注・キング、ビショップ、ナイト)の仕事がきちんと整え られた。レーモン-ルーセル公式のおかげで、チェス教師たちは生徒の不平不満に答え ることが出来るだろう。この魔術的な公式は我々の頭の中にすんなり入ってきて、ほ とんど何も考えずに自動的に王手詰みへと導いてくれる。 最終的な位置 この方式を説明する前に。ビショップとナイトの王手詰みは、ビショップと同じ色 を持ったマスが角にある盤面で起こる。つまり図1a,図1bが示すように、この角のマ ス目の近くで確実なものなのである。
図1a |
図1b |
セディーユの記号 この2つの最終的な位置を調べてみれば、次のようなことがわかるだろう。ナイトは ビショップに対するセディーユのようなものとして存在する。このセディーユの記号 の元でビショップとナイトの王手詰みの仕事は続くだろう。 諸段階 b7で勝ちに至るためには、ビショップの扱いにおいて2つの重要な段階がある。図2 a,2bでわかるように。
図2a |
図2b |
前方の黒いマス目から黒キングが脱走するのを防ぐために白キングが協力して行動 するならば、b3におかれたビショップは黒キングに余裕を持たせつつ決定的な牢獄の 中に閉じこめておくことが出来る。(訳者注・b3ビショップはa2からg8に至る斜めの 白マスをすべて支配しているから、黒キングが線より右に逃げるには黒マスをつたっ て行く他ない) 一方、白のナイトは後ろの黒いマス目からの黒キングの逃走を防ぐ。もしビショッ プを図(訳者注・図2b)のようにb5に置いた場合、白キングが黒キングの逃走を防ぐ ような形で十分に近くにいるような形を作り出すことが出来れば、黒キングの監獄は 狭まって行くだろう。一方、絶えずセディーユの形に位置している白のナイトは b6,a5を通っての後ろからの逃走を防ぐ。 見てわかるように、ビショップに対してナイトがセディーユの位置にいれば、この2 つの駒は黒キングの逃走の可能性を取り上げているにも関わらず、黒キングに接近さ れない(訳者注・2つの駒は互いに補い合って近づく隙を与えていないのだ)。 公式 これらの予備的な考察のあとに、レーモン-ルーセル公式を以下のようなものとして 示しておこう。 『白のビショップは自分側のキングの協力によって、黒キングをますます狭められて ゆく包囲網の中に閉じこめておくので、白ナイトの役割はセディーユ、あるいは来る べきセディーユに限定される』 (訳者注・続く)
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