55-5-8(オポジションの研究4 12/2)



 またも図4を見ながらしつこく考えていく。


図4
 まず数えてみると、黒キングは最大で三歩動けるだけである。それが囲み線の範囲だ。 これはおそらく、hの縦筋にいるフリーの(前にさえぎるもののない)白ポーンのせいで ある。このhのポーンは四歩進めばクイーンになってしまう。クイーンになった途端のh8 ポーンをすかさず取るには、黒キングがその四歩目にg7,g8,h7の三つのマス目のどれか にいなければならない。  したがって! 白が先手ならば、黒キングはその「g7,g8,h7」から数えて三歩のマス 以外に動きようがないのである。
 図4に関する限り、白キングはむしろ自由である。hポーンをいつ動かし始めてもいい。 その間、自分はあちらこちらに移動し、黒キングを脅かしていることが出来る。  だからこそ、図4において、黒キングの真後ろにまで大文字(白キングの移動可能性の 範囲)が書かれているのだと考えられる。 「そんなに遠くまで動いたら、その間に黒キングが白ポーンを取ってしまわないか」とい う疑問があるだろうが、盤面をよく見てみるとそれは不可能である。h白ポーンが不用意 に動き出さない限り、黒キングはgファイル(g3)のポーン以外狙えない。hポーンはgの ポーンに守られているのだ。  ところが、唯一狙えるgの白ポーンを黒キングがもし取ったとしよう。そのとき、黒キ ングは奪ったgポーンのいた位置g3に入ることになる。すると、その途端に走り出したh のポーンに追いつくことが出来ない。なにしろ相手は四歩で盤面端にたどり着いてしまう のである。  だからこそ、黒はほとんど打つ手がない。
 次なる僕の疑問は、なぜ黒キングは自分の後ろに一歩も引くことが出来ないのか、であ る。が、しかし、これもやはりポーンの位置関係と歩数でわかる。  ただひとつ残った黒ポーン。白キングは最小で四歩進めばその黒ポーンを取ることが出 来る。ポーンは斜め前の駒を取るから、白キングは回り道をして黒ポーンの真横に行かな ければならないのだ。  f4がその位置である。もしも白キングがf4に入ればゲームは終わったも同然。次に必ず g4に入るのだから。だからこそ、その位置に記号がふられていない(実際は歩数に関係な く、“白キングが入ると勝負がほぼ終わり”のマス目,すなわち黒ポーンを取り得る位置で あるf5,g5,h5にも同様に記号はない)。  さて、その勝負どころf4までは、白キングの今の位置から三歩。黒キングが問題のg4 ポーンを守るためには(キング同士はひとマスずつ空けて位置しなければ自殺手になるか ら)、相手より早くf5にいなければならない(それ以外のf4もg5も、相手白ポーンに取 られてしまう位置なので、たったひとつしかない)。
 さて、白キングのf4までの最小歩数は三であった。もし白が先手ならば、黒はそれよ り早く、つまり二歩以内で防御位置のf5に入っておかなければならない。  だからこそ! 黒キングは一歩も後ろには引けないのである。一歩でも引けば、f5ま で二歩以上になるからだ。  逆に言えば、f5まで二歩の範囲内なら黒キングはどこにいてもよい。それが囲み線の もうひとつの意味である。
 では、他に記号のないマス目、h6,h7,h8,そしてg7をどう考えたらいいのかということ になる。ここも同じく“白キングが入ると勝負がほぼ終わり”のマス目であるはずだとい う推論が成り立つ。  すなわち、図4のほとんどの意味がこれでわかったことになる。
 やれやれ……。  オポジションはとんでもない。  とんでもない死闘の数学だ。
 オポジションは「ツークツワンク」を前提とする。 “ある場所に駒を進めざるを得ないように強制されること”、それが意味だ。  となると、図4をこう説明することが出来る。
 黒は囲み線より外に出られない。  白は囲み線の内部に侵入を果たせば必ず勝ちになる。  なぜなら、問題のf4に黒キングがい続けることは出来ないからである。動かせるのはキ ングだけである以上、黒はf4に入ったり出たりを繰り返さざるを得ず、囲み線を破られた 途端、白はf4から黒キングが離れる瞬間目指して突き進めばよいのだ。そして、必殺のマ スである「f5,g5,h5」のどこかに入り込めばよい。  したがって、黒キングは記号が示す位置に必ず移動し、白キングを威嚇しなければなら ない。  例えば、a6に白キングがいるなら、黒キングは記号が示す通り(「A1」)e6に入らざ るを得ない。実際に駒を動かしてみればいい。たとえ距離があっても、もし次の手で白キ ングがb5なりb7なりに近づいて来たとき、もはや黒キングはそれに対抗するべき位置に 入る歩数が足りなくなる。「b5、b7」ならそれぞれ「d5、d7」に位置しなければならな いのにもかかわらず、もう間に合わない。結局死線を守れないのである。  だからこそ! それは“ある場所に駒を進めざるを得ないように強制されること”、つ まりツークツワンクとなる
 55-5-6に示した疑問もようやくこれで解ける。 「黒キングがe6(a)にいるとする。この場合,白キングがa6、c6、a8、e8(A)にい るときはオポジションである。しかし、白キングが他のA上(たとえばc4)にいる場合 は、ツークツワンクにはならないのである」  もはや我々には意味がわかる。 「c4に白キングがいるとき、黒キングがe6にいた」とすれば、もはや黒の負けなのだ。 次の手で囲み線を破られて、d4に侵入されてしまうからである。A2に白なら、黒もa2に いなければ勝負にならないのである。  この特殊な弱み、囲み線侵入防御の危険なマスがつまり、 A2、B2、あるいは盤の上方 にあるB3やA3という特別な数字を振られた場所なのだ。そこに白キングが入ったなら、 黒は必ず直接オポジションを取る以外ない。  そうでなければ、すぐさま前線を突破されて負けるのだ。

 長かった。  ここで図4を抽象的にまとめることが出来る。
   次の項でその単純化したまとめを書こう。  



INDEX

Copyright (C) SEIKO ITO , EMPIRE SNAKE BLD,INC. All rights reserved.