55-4-8(オポジション3 99/11/4)
しかし、むろんのこと、デュシャンが単純に“チェス趣味(!)”を作品化したとは
思えない。おそらく、明滅にとらわれた理論的な裏付けがあるに違いないのだ。だが、
一方で、墓を32区画にしたルーセル、死んでから小説理論を含む原稿を発表させ、そ
のいわば“遺作”の中に自分が発見したチェスの定跡をはさみ込んでいたルーセルへの
オマージュはとうてい隠しようもない。そして、前に述べたユーモアとしてのツークツ
ワンクという意味合いも。
では、最初にはめたのはやはりデュシャンなのか、ルーセルなのかという疑問に立ち
戻らざるを得ない。
真似合う二人の最初の一手はどちらが指したのか?
はたまたルーセルの墓が4区画の八階建て、チェス盤の半分しかないのはどういう意
味か?
何も解けない。何も解けないのにノートを進ませる何かだけがある。
とりあえず、デュシャンの遺作について、またはあのダンスホールでのワルツについ
て丁寧に考えていくことしか今は出来ない。
光と影というものについても、子供のように基本的に。
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