55-2-1(デュシャン/ルーセル)
レーモン・ルーセルは死の一年前に突如チェスを始める。その姿を町で見かけたデュシャン
がいかにショックを受けたことだろうか、と前回55-1-9書いた。
これは単に自分の趣味の世界に唐突に近づいてきたルーセルの不気味さ、ということだけで はない。私の考えでは、すでにデュシャンは舞台版の『アフリカの印象』を観たときから、 ルーセルの中にチェスを見ていた。だから、デュシャンは無垢の人ルーセルがついに意識的に チェスを始めたことにこそ驚いたのである。
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